食品業界

食品の品質保証の仕事とは? 食品業界10年選手が解説

食品業界の縁の下の力持ち、品質保証。
農学部卒業生にとっては憧れの職ではないでしょうか。

実際品質保証と品質管理の違いってなに?
実際の品質保証の仕事って何?
うちの会社の品証って何をしてるの?

そんな疑問に、食品卸も自社工場もやってる食品会社の現役品質保証員がお答えします!
前職も工場調査をし、サプライヤー管理で年間30以上の工場訪問をし、
自社工場管理もやっていますよ!

この記事を読むと、

  • 食品メーカーの品質保証の仕事内容
  • 品質管理との違い
  • 品質保証業務で役立つ知識

が分かるようになっています。

りりっつ
りりっつ
それではいってみよー!

食品業界の品質保証の仕事を具体的に(品証3本柱)

食品業界の品質保証の仕事の柱は3つ。

  1. クレーム対応
  2. 商品情報管理・法令順守
  3. サプライヤー管理・工場指導

それぞれの業務内容をくわしく解説していきます。

クレーム対応

購入した食品に不備等を発見した場合、
基本的にはパッケージに記載された連絡先に連絡して交換や返金対応を求めることでしょう。

商品センターやお問い合わせ先の窓口として、
品証ダイレクト番号であったり、いったん事務所で事務員さんが応答していますが、
対応内容を判断するのは、基本的には品質保証の仕事。

日切れや入り数不足、割れなどの簡単な対応であれば、
受電した人で交換対応や返金対応の案内でご納得いただけますが、
「異物混入」「かび」「喫食後の体調不良を伴うお申し出」は結構対応が難しかったり。

こういった対応が難しい『重大クレーム』は、
基本的には品質保証の責任者と、営業担当など2名以上で、
直接訪問による謝罪と適切な対応(良品交換・返金など)が望まれます。

クレーム内容によっては、報告書の提出を求められますから、
その報告書を請け負うのも品質保証の仕事の1つ。

ちなみに、ロット落ちや表示ミスは原則個別対応不可なので、
食品衛生法に基づき、厚労省への届け出が義務付けられていますので、
お忘れなく!

商品情報管理・法令順守

自社商品が販売する上で法律的に問題ないものであるか確認すること、
問題がない状態に軌道修正することも品質保証の仕事です。

食品を販売する上で、

  • 食品衛生法
  • 食品表示法(各種公正競争規約)
  • 計量法
  • 景品表示法
  • 商標

これらは絶対に外せない確認事項です。

一つでも違反すると、だれかしかが損害を被ることになりますから、
必ず法律はすべてクリアした商品であることを確認してください。

サプライヤー管理・工場指導

食品事業者で避けて通れないのは安全な原料・商品の調達

これは2020年6月に制度化されたHACCPの概念では必ずやらないといけないんですよね。
なぜなら、安全な仕入れ先から調達することって明記されてますからね。
(参考:HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A

食品の卸や商社、小売りなら、製造委託先や仕入先の管理、
食品メーカーだったら、原材料メーカーの安全担保は必須なんです。

で、取引先の安全性の確認をするのが品質保証の仕事の1つ。
ゆえに、工場調査の目も必要になります。

食品業界の品質保証と品質管理の違い

品質保証と品質管理は、
明確に名称の違いを設けていない食品関連事業者もありますが、
年間30社以上訪問している私からすると、
品質保証と品質管理が明確に分けられている工場さんの方が断然上手くいっています

では、両者の違いとは?

イメージとして、
品質保証は社外への対応が主。
品質管理は社内への対応が主。

品質保証が消費者や仕入先などの社外への動きがメインであり、
品質管理は自社工場内の衛生管理(日々の菌検査や規格チェック、記録チェックなど)といった、社内へ向けられている仕事がメインですね。

社外へ向けられる文書類の作成・管理は品質保証。
社内で必要な文書類の作成・管理は品質管理。

食品業界の品質保証で役立つ資格・知識

食品関連は直接口に入るものなので、
各種安全をとるための法律がたくさん。

特に品質保証は製品を保証するために、
法律問題は避けて通れません。

食品業界の、特に品質保証で役に立つ資格・知識を説明します。
就職や転職にも役立つかも。

衛生管理者

そもそも食品事業では、
衛生管理責任者は必ず定めておかなければならないので、
衛生管理者はなくてはならないもの。

複数人いたら直接は役には立たないのだけど、
必ず一人は資格が必要なので。

食品衛生監視員・食品衛生管理者の資格要件を満たす者
• 調理師、製菓衛生師、栄養士、船舶料理士等
• 都道府県知事等が行う養成講習会(1日6時間程度)等を受講した者

(出典:HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化

衛生管理責任者は、
食品倉庫でも冷蔵庫がある事業者なら、
温度管理を含め衛生管理計画が必要になりますから、
事業所に1人は定める必要がありますよ!

食品表示検定

食品表示はね、
本ブログでも度々煩雑や重要性は解いているのだけど!

一丁一日では絶対に覚えられないんで、
適当やって食品表示法違反→回収くらうくらいなら、
外注を検討した方がいいレベル。
(マジで間違った表示が溢れすぎている!!)

食品事業者なら、絶対に対応しなければならないので、
食品業界で品質保証やってみたいと思うんなら絶対に取り組むべき

奥が深いので、勉強してみると沼にハマるかも?

HACCP講習3日以上

HACCPは複雑なのにもかかわらず、
制度化しており、全食品事業者が取り組むべきものとして掲げられています。

独学では本当に厳しいものがあるし、
サプライヤー管理せねばならず、
品質保証は取引先工場のいいの悪いのの判断をしなければならない立場。

取引先にもHACCP管理できてるところを選びましょうってなっているので、
HACCPの「正しい姿」「あるべき姿」を知らない分には太刀打ちできません

今は自治体HACCPは下火になり、
縮小傾向にあるのだけど、
継続して地域HACCPを継続している自治体認証では、
HACCPチームのメンバーのいずれかにHACCP講習会3日以上参加を要件に入れているところも。

景品表示法

景品表示法は優良誤認・有利誤認を回避するのに不可欠。

一部の公正競争規約は、その業界団体に所属している企業は守るべきとなっており、
公正競争規約に違反していても、表示法違反にはならないけれど、
景品表示法違反の目安になっているという証言もあります。

例えば、ビスケット類の表示に関する公正競争規約では、
チョコ(ココア)クッキーと名乗るには、カカオ分3%以上含まれていることが条件。
(出典:ビスケット類の表示に関する公正競争規約及び同施行規則
カカオ分3%を割る場合には、チョコ(ココア)風味クッキーであり、
カカオ分の配合割合の明記が規定されています。

公正競争規約については、全国ビスケット公正取引協議会の会員でなければ、
食品表示としては守らなくてもなんの罰則もないことになっています。
が。そもそも公正競争規約って、
公正取引委員会及び消費者庁長官の認定を受けている内容だから、
違反すると食品表示法的にはセーフだけど、
景品表示法的にはアウトの根拠になり得るので、
守っておいた方がいいよ、絶対。

商標検索

商標はね…
登録されているものは全部閲覧できるので、
知らなかったでは済まされないんですよね。

抵触するとダメージが大きいのが商標。

特許情報プラットフォームで簡単に検索できるので、
新商品の開発時には必ず検索掛けるようにしようね。

特許庁が定期的にプラットフォームの使い方のレクチャーをしてくれる、
講習会が開催されているので、
品質保証を希望するのであれば受けて損はないよ。

食品業界の品質保証の守備範囲は広い

食品業界は人の命にかかわるものなので、
縛る法律はたくさんあります。

それゆえに、
品質保証は文字通り品質を保証するための部署だから、
法律も品質を保証する上で欠かせない分野であり、
膨大な勉強量を要する部署とも言えます。

ただ、品質保証は、
自社商品の安全面にかかわる窓口だから、
他社工場を巡ったり、自社への教育をしたりと、
やりがいある仕事。

栄養学部や農学部を専攻しているのなら、
食のプロフェッショナルを目指したいところ。

品質保証は奥が深い!

ABOUT ME
りりっつ
一姫二太郎もつ昭和最後生まれワーママ。 食品衛生・食品化学で学位をとった修士持ち。 食品表示と食品衛生が得意。工場向け防虫業者→食品メーカー兼卸品証勤務。毎日食品表示法と景品表示法を乗り回し、商標関係も嗜む。